彼らのように生きていきたい
はじめまして。上海と申します。
壁に描かれた落書きを写真におさめがちです。
彼らのように生きていきたい
『ともだちは海のにおい』という工藤直子さんによって書かれた本を知っていますか。私はこの本が子供のころから大好きで、大人になった今でも、手元に大切に持っています。
私がこの本を久しぶりに開いたのは、去年の冬頃でした。当時、夜遅くに疲労困憊して帰る日々が続いていましたが、なかなか眠りにつけずに苦しんでいました。目を閉じても、ヒーリングミュージックを流しても、頭の中が空っぽにならないのです。
そんなわけで、大学の授業をよく寝坊していた私は、ゼミの先生に眠れないことを寝坊の言い訳に伝えました。すると先生は、どうせ眠れないなら本でも読んで賢くなりなさい、そして眠くなったら寝たらいいじゃない、と進言してくださいました。
先生の言葉を思い出した私は、なかなか眠れなかった夜、本棚の前に行きました。難しそうな本を読むと早く眠れそうだけど、睡眠の質は悪くなりそうだなあと、贅沢にも睡眠の質のことまで考え、難しそうな本は読まないことにしました。
何を読もうかと、本棚の一番下の段をのぞき込むと、実家から持ってきていた『ともだちは海のにおい』が隠れているのを見つけたのです。あ、絶対にこれだ、と思いました。この本が与えてくれる安心感を思い出したのです。
なんだか小さかったころの自分に戻れるような気がして、ワクワクしながら本を開きました。少しづつ読み進めていきます。天気のいい夜、静かな水面に映る星、あたたかい海。だんだんと私は工藤直子さんが描く海のなかで、深呼吸をしているかのようにリラックスしていきました。その夜、静かな部屋のあたたかいベッドの上で眠くなるまで本を読みました。
本にでてくるイルカやクジラやウミガメが、夜更かしの私を責めることなく、子守唄をうたってくれているかのように、優しい言葉であふれていました。
私は知らず知らずのうちに、生き急いでいたのかもしれません。日々に満足できずに、また今日も何も成しえなかったと落胆しながら、自分の無能さを肴にお酒を飲んでいたようです。
完璧を目指して努力することは崇高なことです。すばらしいことだと思います。でも、完璧を目指すことで、自分や誰かを傷つけてはいけません。理想のキャパシティーと実際のキャパシティーの差に嘆くよりも、今の自分が、相手が、関わるだれかが、出来る範囲で頑張ったことを、素直に受け入れることで、もっと優しい大きな輪になるのだと、かれらに教えてもらえたようでした。
もし将来、だれかと御縁があり、私のもとに小さな命がやって来てくれることがあれば、同様に彼らと友達になってくれたらいいなあと思うのです。
上海